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私は、愛読書の影響で、ボートを漕ぐのが小学生の頃から大好きでしたが、その本に出てくる…
ツバメ号の船尾梁には、バタつきパンのへりを一口かみとったような、半円形の切りこみがあって、それは、ちょうどオール一本が、ゆっくりはいるほどの大きさだった。だから、そこにオールを一本はめて、たえず水をかくようにねじりながら左右に動かせば、船を進ませることができる。
アーサー・ランサム著『ツバメ号とアマゾン号』第4章「かくされた港」より
…この漕ぎ方は、まだ試したことがありませんでした。
先月、お江戸深川さくら祭りで、和船に乗って花見をした際に、和船を櫓一本で漕ぐ体験をさせてもらえると聞き、同じ本が好きな仲間を誘って、東京都江東区の横十間川親水公園に向かいました。
まずは船頭さん(和船友の会の方)が、お手本を見せてくれました。
自分で同じように漕いでみると、思ったより軽い、つまり、力が要らないことに驚きました。スピードはそれほど出ませんが、大人数名が乗った和船を、女性でも櫓1本で進めることができるのです。
一緒に行った10名が2隻に分乗して、途中で橋をくぐる200mほどの区間を1人が漕いだら交替し、行ったり来たりしながら櫓漕ぎ体験を楽しみました。
下船後、和船友の会の方にいろいろなことを教えていただきました。中でも印象に残ったのは、「櫂(かい)は抗力で進むけど、和船の櫓(ろ)は揚力で進むので効率が良い」ということです。(普通のボートのオールや、カヌー/カヤックのパドルは、櫂の一種です。)
確かに櫓の断面は飛行機の翼のような丸みがあり、それを水の中で左右に動かすのに、それほど力は要りません。オールやパドルを水に入れて、ぐいっと力を入れて引っ張る感じとは明らかに違うので、第1印象で軽いことに驚いたのもそのせいです。
大人10名ほど、あるいは1トンほどの貨物を載せた和船を、時速2kmほどで、人間が1人で長い時間、疲れずに漕ぎ続けて進められるというのは、考えてみると恐ろしいほど効率的です。
その後、修復中の和船を特別に見せていただきました。船尾の少し左舷よりに数cmの突起物がありますが、ここに櫓の途中に付けられた穴をかぶせて、ここを支点にして漕ぐようになっています。
アップして見ると、このようなものです。櫓に始終ぐりぐりやられて、櫓が生み出す揚力を船体に伝えるのもこの1点を通してなので、とても健気です。さすがに消耗品とのことでした。
「船尾から1本の棹で漕ぐ」という点では、愛読書に出てくる漕ぎ方も和船も同じですが、前者は櫂による抗力、後者は櫓による揚力で、船を進める原理は異なるものでした。 オールの形状によって大小はあるにせよ、ツバメ号の場合も揚力は発生し、ボートを推進するのに利用していると考えられるので、この部分は削除いたします。
コメント
ボートのオールを船尾でねじっても、揚力はでるのかな、とも思います。オールは少しくぼんでませんか?(少なくともカヤックパドルの多くはくぼみがあります、COOTさんのはないかも)
なるほど〜。オールの形状にもよるけど、ツバメ号の場合も、少しは揚力が出ていた可能性はありますね。オールと手漕ぎボートで実際に試して検証してみたくなりました。