地震当日@宇都宮

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「あっ、また地震だ。」という感じで始まった横揺れが、だんだん大きくなり、机の上の液晶ディスプレイも倒れそうなくらいになった。ディスプレイを机上に寝かせてから机の下にもぐり、揺れが収まるのを待った。正確には分からないけど3分くらい揺れが続いたように思う。同じ部屋の反対側の電子機器は、ドシーン、ガシャーンと、倒れたり落ちたりしているようだ。後で分かったことだが、このあたりは震度6弱だったらしい。

揺れが収まり、机の下から出ると、壁と天井の間に隙間が出来ている。ちょっと迷ったが自分のノートPCとその電源アダプタを持って、部屋から廊下に出ると、両側の本棚から落ちた本が20〜30cmの厚さで足の踏み場もないくらいに積み重なっていた。廊下の右手側は天井が落ちて塞がれていたが、非常口は左手側に2つある。一番近い非常口の前には人がいて、もう1つの方から出るように言われた。本の上を歩いて、少し歪んだり隙間もできていた感じの鉄製の非常階段を降りて避難した。2階建ての2階からの避難なので、すぐに外に出られた。

ここは何十棟も建物がある施設で、働いている人も数千名はいる。私が避難した場所にも大勢の人が集まっていた。皆、落ち着いている。ユーモアも失わないし、花粉症で大変な人に余ったマスクを譲ったりして、お互いに気遣っていた。何度も大きな余震が来た。まっすぐ立っていられないほどの揺れもあった。その度に建物の屋上に立っている避雷針が大きく揺れていた。最初の揺れが収まったタイミングで、すぐに外に避難することが大切であることを実感した。

幸いポケットにdocomoデータ通信アダプタを入れていたので、ノートPCにつないで、地震速報のウェブページを見ると、震源は三陸沖で震度7とのこと。より震源に近い宇都宮郊外に出張中だった私とチームの皆が無事であることを、会社にメールで一報する際、妻にもbccしておいた。研究開発施設なため、個人の携帯の所持が禁止されていて、持ち出したPCは貴重な通信手段だった。

屋外で2時間程待機して、日も落ちて皆が寒さで震え始めている頃、帰宅して良いとの連絡があった。コートや携帯などを残してあるロッカールームにも必要最小限なだけ入室可とのことで助かった。ロッカールームまでの建物脇を歩いて行く間、所々で崩れ落ちた壁、動いてぶつかっている駐車中の車、ずれてしまった空中廊下…、思った以上に建物への被害は大きそうだ。停電で真っ暗なロッカールームから手早く荷物を出した。あれだけの揺れでもロッカーが倒れていなかったのは助かった。

月曜から泊まりがけで出張に来ていて、金曜の今日帰宅する予定だったので、宇都宮駅近くのホテルに荷物を預けてある。電車は動いていないかもしれないが、まずはホテルまで戻りたい。駅までは約12kmある。普段はバスだけど、地震後でバスは走っていない。2時間かけて歩く覚悟はあるけど、自家用車で通勤している人のための駐車場の出口で「駅までオネガイ」と書いた紙を持ってヒッチハイクすることにした。

若い男性ドライバー1人の車が、「こういう時はお互い様ですから」と言って、同僚2人を含めて3人を気持ち良く乗せてくれた。道中の被害状況もすごかった。新聞紙のロールの倉庫が荷崩れで壁が大きく崩れ、ロールが飛出している。民家の塀がばっさり倒れている。道路に出来た亀裂から水が吹き出している。屋根瓦もところどころ落ちている。全ての信号が消えていて大渋滞していたけど、交差点ではお互いに譲り合って、慎重に秩序だって車は通過している。ちょっと感動した。何度か大きな余震も来て、車は揺れるけど、片側2車線の広い幹線道路を走っている分には、特に危険を感じることはなく、むしろ、地震の時に車の中というのは安全なものだなあと思った。

身体が冷えていたので、途中で工事現場の仮設トイレを利用させてもらったが、その間にも車はほとんど前に進んでいないくらいの大渋滞。車の中でパソコンから情報収集すると、新幹線も在来線も動いていないようだ。Twitterを宇都宮で検索すると、そもそも駅自体が東口〜西口間の通路も含めて閉鎖されているらしい。実家と娘とは携帯メールで連絡が付き、無事の連絡ができた。結局車でも2時間くらいかかって、もう真っ暗になってから、駅近くまで来たけど、暖かい車の中で、パソコンで情報収集も出来たので、本当に助かった。

駅の東側で車を降りて、西側のホテルを利用していた同僚2人と携帯の番号・メアドを交換した上で別れ、私は駅東側の滞在していたホテルに行く。停電で真っ暗な中、予約がある人は泊めているらしい。荷物を預けていたので中には入れてくれたけど、その晩は満室なので予約がないと泊ることは出来ないとのこと。まわりにホテルはいくつもあるけど、停電で真っ暗で寒い中、予約なしで直接行っても難しそうだし、電話しても断られそうな気がする。そもそも私だけじゃなくそういう人は多そうで、ホテルはどんどん満室になっていくだろう。そこで、パソコンとデータ通信カードをまた取り出して、楽天トラベルで宇都宮駅周辺のホテルを検索し、東側の近くの別のホテルに空き室があったのを予約した。

ホテルの人も申し訳なさそうにしてくれていたけど、何とか見つかったのでと言って荷物を受取り、そのホテルまで歩いて行った。やはり停電で真っ暗。「予約してありますが泊れますか?」と言うと、紙をチェックして予約が見つからないと言う。「さっき予約したばかりで」と言うと、停電でファックスもパソコンも使えないので連絡が入っていないと言う。そこまでは想定内(^^)。パソコンを取り出して証拠の予約確認画面を見せると、ようやく泊めてもらえることになった。しかも、空きがないので普通のシングル料金でデラックスルームになってちょっとラッキー。エレベータは動いていないので、真っ暗な階段を上り始めたけど、本当に真っ暗でちょっと無理。(後で携帯の画面を懐中電灯がわりにすれば良かったと思ったけど)フロントに戻って、懐中電灯を持ったスタッフに部屋まで案内してもらった。その人は、他のお客さんの案内をしてきたばかりで、階段の上り下りでまだハアハア言っていて申し訳なかった。

部屋に入ると、真っ暗だけど水は出るし、6階だけど余震が来ても不安な揺れ方はしないので、ホッとした。夕食は食べていないけど、もう今日は外に出る気はしないし、そもそもレストランもコンビニも停電で閉まっていそうだ。同僚2人も知人の所やホテルで滞在先を見つけたとの連絡が入り、皆落ち着けて良かった。駅の反対側は電気が通じているところもあるらしい。1軒開いているコンビニはすごい行列とのこと。ホテルの人がスナックと飲料水を部屋まで配ってくれて、これも嬉しい。

今晩は帰れなくて宇都宮に泊ることを家族に連絡し、残りの家族の無事も確認できた。東京町田の自宅でも震度5だったとのことでビックリした。やはり停電しているらしい。食器が少し割れた程度で、特に被害は無いようだったのは良かった。地震のニュースも気になるけど、携帯もパソコンも停電で充電できず、明日もどうなることか分からない状況で電池の残量は貴重なので、ほどほどにして寝ることにした。

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