礼文島の「桃岩荘」で濃い異世界を体験

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いざ、桃岩荘へ

学生時代、ユースホステルを利用しながら北海道を旅行中に、「北海道三大キチガイ・ユース」というものがあるらしい、その中でも礼文島の「桃岩荘」というのが一番スゴイらしいという噂をあちこちで耳にしました。それから20年後、ワクワク・ドキドキしながら稚内発礼文島行きのフェリーに家族連れでとうとう乗っていました。

桃岩荘のヘルパー達による大歓迎の儀式は、船が礼文島の香深港に着く時から始まりました。スリーナイン号という車で港からユースまで向かう間に、日本標準時から桃岩時間へ時計を30分進める時差の修正をして、知性・教養・羞恥心を途中のタイムトンネルに置き去ります。

車から玄関までは我が家4人のために敷かれたレッドカーペットを歩き、扉を開けると笛や太鼓の鳴り物入りの歓迎を受けました。その数分後には、もう1台のブルーサンダーエース号を迎えるために我が家も鳴り物入りの歓迎をする方にまわっていました。

息子(中2)は、礼文島到着の4時間後には、「将来、桃岩荘のヘルパーになりたい」、「来年の夏もまた桃岩荘に来たい」と言っていました。

夜のミーティングは、おもしろおかしい島の観光案内で始まりましたが、その後、噂通りの「歌と踊り」となりました。でも「下品さ」はないし(上品でもないけど) 、1人で歌わされたり踊らされたりということもなくて、皆一緒なのでとても楽しい一時でした。

愛とロマンの8時間コース

翌日は「愛とロマンの8時間コース」に参加です。礼文島の最北端スコトン岬までバスで行って、そこから西海岸沿いに桃岩荘ユースまで25kmくらいの道を約11時間かけて、ユースの仲間と20人くらいで歩きました。

崖あり、青い海あり、砂浜あり、スコットランドのハイランドを思わせるような起伏に富んだ緑の草原を歩き、暑い日だったのでトレイルを横切って流れる渓流で喉をうるおし顔や手を濡らして、森を抜け、ようやくお昼の休憩地点に付き、「圧縮弁当」と呼ばれるユースの弁当を食べました。

そこからは急な斜面を一気に海岸まで下ります。こういう難所で助け合ったりして「愛とロマン」が生まれるかも、ということで名付けられたコース名なのですが、その実態は「汗と涙」とも言われているかなりハードなコースです。

「8時間コース」の終点から、さらに、桃岩荘ユースまで2~3時間歩きました。

クタクタになって、ユースにようやく到着です。最後は全員で手をつないでゴールインしました。ユースではヘルパー達による盛大な出迎えと、無事な到着を祝う歌と踊りの儀式がまたありました。

翌日・翌々日は、酷使した足が痛くてあまり歩けず、礼文岳に登るのや礼文滝まで歩くのは次回のお楽しみに取っておいて、近くの港まで行ってウニ丼を食べたりして、のんびりと過ごしました。

落陽

桃岩荘は礼文島の西海岸にあるので、天気が良ければ水平線に沈む太陽が素晴らしい夕焼けとともに見られます。毎日、桃岩時間の19時頃になると、日没を眺めました。

最初の晩は晴れていたけど、遠くに雲があったのか空気の透明度がいまいちだったのか、水平線と太陽の間に少し隙間を残して日が沈みました。

最後の晩は、時々雨も降る天気のパッとしない一日だったのに、たくさん雲を残す空が真っ赤に染まって、太陽と水平線の間に全く隙間を空けない見事な落陽を見ることが出来ました。隙間有りで水平線に沈む太陽は今までも何度か見たことがありましたが、隙間がまったくないのを見たのは初めてでした。

当然、落陽の儀式があります。ユースの玄関前で、ヘルパーのギターと共に拓郎の「落陽」や、「ぎんぎんぎらぎら夕陽が沈む~」等を歌って太陽を見送りました。

また来るぞ~

桃岩荘には、仕事も遊びも何事にも真剣に取り組んで、それをとことん楽しみに変えてしまう文化があります。例えば、朝の掃除です。雑巾がけは、部屋の一辺に皆で並んでラッパの合図で部屋の反対側までレースをします。掃除は自由参加ですが、ほうきや雑巾の数以上に参加希望者が集まってました。

家族連れの利用者も多いそうです。年配者も泊まっていました。年配の人のコメント:「こんなに楽しい宿に泊まったのは初めてだけど、こんなに疲れる宿に泊まったのも初めて」。この夏のお盆に泊まったばかりだけど、子供がどうしてもと言うのでまた来たという家族が、我が家と入れ違いでやって来て、港での盛大な見送りに加わってくれました。

ユースを出る時には、いつまでも、いつまでも、姿が見えなくなっても、声が届く限り「行ってらっしゃ~い」「行って来ま~す」「また来いよ~」「また来るぞ~」と呼び交わし、じーんと感動します。

港でも、フェリーが出て姿が見えなくなるまで、見えなくなってもしばらくの間、呼び交わしが続きます。他の乗客の目は気にせず、岸壁と船の上で、皆でユースで覚えた歌と踊りを一緒にやります。

日常の中の非日常、濃くて感動の多い桃岩の世界でした。

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コメント

  1. ラガーシャツ より:

    2001年8月26日の「愛とロマンの8時間コース」に参加した者です。当時、私は自転車で北海道を周っており2泊3日で桃岩荘に宿泊しました。
    礼文林道の分かれ道で休憩している写真がありますが、その中で帽子をかぶりラガーシャツを着ているのが私です。8時間コースでは桃組とアホ組の二班に分けられ、アホ組のリーダーを任されました。
    あの日、皆さんと歩いた楽しい一日はつい最近のように覚えております。ブログの写真がとてもきれいなので20年以上前とは思えない程に感じました。8時間コースの文章を読んであの日が目に浮かぶようです。
    年内中に、私が自転車で旅をしたものを自費出版しようと考えています。もしよろしければ一生楽しむ旅ブログの写真をお借りしたいのですが・・ご連絡お待ちしております。

  2. Coot より:

    ラガーシャツさん、とても懐かしく嬉しいコメントをいただきありがとうございます。
    20年以上経った今になってもまたこのような繋がりを持てるのは、あの濃い時間を共有できた桃岩のおかげですね。
    写真はどうぞお使いください。出版される自転車旅の本はぜひ読んでみたいと思いますので、出版された際にはまたご一報いただけると幸いです。

  3. ラガーシャツ より:

    写真使用の許可をして下さり、誠にありがとうございます。
    自費出版しましたらCootさんに本を差し上げます。かなりのページ数になりそうです。

    まさか2001年8月26日の写真を見るとは夢にも思いませんでした。つい最近、体験された方の写真だと思っていましたので、自分の姿を見た時はかなり驚きました。Cootさんの写真はどのページもきれいで旅をしたくなりそうです。

    写真はカラーで使用したいと考えております。写真の提供者としてCootさんのお名前と「一生楽しむ旅」のブログ名を掲載させて頂きます。

    あの日はとても濃い一日でした。写真使用許可のお返事を頂いた後、試験的にCootさんの写真と私が当時撮影した写真を合わせて8時間コースのページを作成した結果、さらに写真を増やせたらと思うように至りました。図々しいお願いになるのですが、桃岩荘の建物と外観と内部、夜のミーティング(※踊りや歌に参加していたので撮影できませんでした)、桃岩荘的(※なんでもかまいません)な写真は撮影されておりますでしょうか?また、8時間コースで見えた様々な風景、特に利尻山や参加された皆さんが楽しそうに歩いている写真は撮影されておりますでしょうか?もしありましたらお借りしたいのですがいかがでしょうか。

    長文で申し訳ございません。

  4. Coot より:

    温かいコメントをいただきありがとうございます。
    私の方も本当に嬉しい驚きでした。
    追加の写真については、直メールいたしましたのでご確認ください。

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