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朝日に染まりゆくネコ港に進入
6時に起きると、ル・ボレアル号は、氷がいっぱい浮かんでいる海を走っていました。
寝ている間にドーン、ドーンと聞こえていたのは、小さな氷山にぶつかる音だったようです。
朝日が、遠くの雪山の頂を照らしています。南極の静かな朝、素敵すぎる景色です。
船は、ネコ港(Neko Harbour)と呼ばれる南極半島中部西岸の深い湾の奥の方まで来ました。風がほとんど無いので、海面が鏡のようです。
ネコ港のネコは、猫ではなくて、20世紀初めにこの辺りで創業していた捕鯨船の名前とのことです。
クレバスだらけの氷河先端を間近に見る
ネコ港には、まわりからたくさんの氷河が流れ込んでいます。
その1つを間近に見るために、写真(↓)の左の方にある雪のない岩場の一番上まで、これから雪原を登って行く予定です。
上陸地点は、ジェンツーペンギンの営巣地なため、立ち止まらずにさっさと歩いて通り抜けました。
雪の斜面は、かなり恐ろしげで、1シーズンに1人くらいは滑落しているのではないかと思えるような場所でした。
でも、登った甲斐があって、上から見下ろす氷河の先端には、たくさんのクレバスがあり、すごい迫力を感じます。
斜面を降りて、同じ氷河の先端を、今度は海岸から見てみました。
氷河がいつ崩落するか分からないし、崩落すると津波が来るので、岸辺にいる時に音が聞こえたら、すぐに高い方に移動するように言われました。
辺りのペンギンも一斉に逃げ出すから、その真似をして一緒に逃げれば良いそうです。
異様な生物サルパを手に取る
上陸地点の水際で、サルパというプヨプヨした生物を見つけ、ナチュラリストから手に取ってもOKと言われました。
毎日夕方には、その日の活動の振り返りと翌日の計画について、エクスペディション・チームからブリーフィングがあるのですが、一昨日は、その中で、ナチュラリストの1人が、このサルパの話をしてくれました。
サルパの繁殖方法は、すごく変わっていて、母がクローンの娘をたくさん作った後、母が父に変身して生殖するとのことです。
この異様な生物の実物を見ることができて良かったです。
氷山の展覧会
ル・ボレアル号は、この南極クルーズで最後の上陸地となるダンコ島(Danco Island)へと移動しました。
ダンコ島に近づくと、面白い形の氷山が次々と現れました。
この氷山のトンネルのような穴には、ゾディアックかカヤックで入ってみたくなりますが、いつ崩落するか分からないので、もちろんダメです。
この氷山の海中部分は、珍しくエメラルドグリーンで、青と白に見慣れた目には新鮮な美しさでした。
この氷山の右の方は、ちょっとスフィンクスみたいな感じです。
まるで氷山の展覧会でしたが、氷山の間の狭いところを船が通り抜けられるか、航海士がゾディアックに乗って、前方を偵察しながらの航行でした。
最後の上陸地で最もタフな山登りをする
いよいよ最後の上陸地です。
私は、いつもより薄着にして、今回の上陸活動の中で1番タフな標高400mの山登りルートを行くことにしました。
途中、結構怖い凍った雪の斜面もありましたが、そこからの景色は素敵です。
頂上は鈍頂で平らな雪原が広がっている感じでしたが、こんなに高い所まで登って来ているジェンツーペンギンもいて、目の前ですっ転びました。
私がトレッキングをしている間、妻は海岸でペンギンウォッチングをしていたのですが、ジェンツーペンギンの群れが、フィッシングを終えて一斉に海から上がってくる様子をちょうど見ることができてラッキーでした。
どちらも充実していた最後の南極上陸活動を終えて、ル・ボレアル号に戻りました。
明日・明後日は、またドレーク海峡の横断です。
夕方のブリーフィングによると、帰りは3mくらいの波で、6〜8mだった行きよりもだいぶ楽そうです。今回は、いつも以上に天候に恵まれた南極だったようで、行きのドレーク海峡が荒れた分、そうなったのだろうみたいな話がありました。