練習船「大成丸」をマニアックに見学

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練習船と言えば、帆船の「日本丸」や「海王丸」がまず思い浮かびますが、海技教育機構は汽船の練習船も3隻運用していて、その中で一番小さなのが大成丸(4千トン)です。

その大成丸が海の日に東京国際クルーズターミナルで一般公開されるとのことで、ヨット乗りの友人Pさんと妻と3人で見学してきました。

二重ブリッジの航海計器

乗船後、まず外階段をどんどん登り、ブリッジから見学開始です。

前方窓の上にずらりと並ぶ航海計器の一番左側に風向計と風速計がありましたが、ここに表示されるのは真の風向・風速、つまり、見かけの風向・風速から船の進路と速度を差し引いて補正した値が示されるそうです。

最近よく乗っているクルーズ船の船室のモニターでも風向・風速は表示されているのですが、これは「見かけ」なので、一緒に表示されている船の進路と速度をいつも頭の中で差し引いて見ていました。そんな必要がなくパッと一目で風の状況が分かるとは便利です。

大成丸の練習船ならではの特徴の一つとして、ブリッジが二重になっていて、上のブリッジが本物で今見学中のものですが、すぐ下に実習用のブリッジがもう一つありました。

そこにもほぼ同じ計器がずらりと並んでいましたが、風向・風速計は実習用の方がより高機能なデジタル計器になっていて、風力・気温・水温・湿度・気圧も一緒に表示されていました。

でも、下のブリッジに置いてあるシミュレーターを使う時以外は、航海中は実習生も上のブリッジで訓練を受けていることが多いそうです。

船体を横移動させる3つのトリック

大成丸にはバウスラスタが備わっていました。バウスラスタとは、船首の船底に横向きに付けられたプロペラを回して、船首を左右に振らせることができる仕組みです。

これまでに自分で借りて操船したことがあるプレジャーボートにもバウスラスタ付きの船がありましたが、離接岸時や狭い水路で他の船と離合する際など、これがあると操船性が格段に上がり、それだけ安全になる超頼もしい機能です。

最近の大型クルーズ船には、船尾の通常のプロペラ(スクリュー)の代わりに推進方向を360度回転できるアジポッドというハイテクな仕組みを備えた船が増えています。アジポッドを横に向ければ船尾も左右方向に移動できるので、バウスラスタとアジポッドが揃えば、タグボートのお世話にならずに離接岸も楽々です。

大成丸には、さすがに高価なアジポッドはありませんでしたが、船尾を横移動できるシリング舵なるものが備わっていました。通常の舵は左右それぞれせいぜい35度くらいしか曲げられませんが、シリング舵はその倍の舵角が可能で、最大の70度まで舵を曲げると、前後方向の推進力はほぼなくなり、船尾を横方向に動かすことができるわけです。

さらにもう一つ、船首を横移動させる仕組みがありました。

下船後に気づいたのですが、左舷側の錨が海の中に下ろされていました。(写真↓の船首下部にアンカーチェーンが少しだけ見えています。)

岸壁に接岸中に錨を降ろす必要は普通はないので、なぜ下ろしているのか尋ねると、船の真下ではなく岸壁から離れた所に錨が下ろしてあって、出航時にウィンチでそれを引き上げることで船首を岸から離すためのものだそうです。

練習船だから訓練のためにわざわざそうしているのか聞くと、訓練のためというより実用性からとのことでした。

強い風が船体を岸壁に押し付ける方向に吹いている時に出航しようとすると、おそらくバウスラスタだけでは力が足りず、そういう時に役立つのかなと思いました。

2種類のコンパス

ブリッジの屋根に「3つ又の先に球が付いた見慣れない物」があったので尋ねると、GPSコンパスのアンテナとのことでした。

3つのGPSアンテナを少し離して配置することで、GPS衛星からの信号の到達時間差や位相差から、船の傾きや回頭速度までも分かるハイテクなコンパスです。

GPSコンパスは安価で高機能ですが、より高精度な従来のジャイロコンパスの方があくまでも正とのことでした。

その他の見どころ

大成丸のデッキには、船名をあしらったロープワークがありました。

隣には、自動車運搬船(しかもエコなLNG船)が一般公開をしていて、これもとっても見学したかったのですが、対象が小〜高校生限定でした。

大成丸を見た後、いろいろな海の日イベントをやっていた東京国際クルーズターミナル内も一通り見学しました。

4階の壁には、ここに寄港したクルーズ船の写真がずらりと並んでいたのですが、その中の1枚がなんと我が家が乗船していたノルウェージャン・ジュエル号がアラスカクルーズを終えてまさに東京に入港する時の写真でした。(その日の記事

今回の大成丸の一般公開では、機関室や生活スペースの見学はできませんでしたが、ブリッジだけでも細かく見ていくとたくさん見どころがあり、船に詳しい友人と一緒だったので自分だけだと気づかなかったことも多々あって、とっても楽しめたし色々と学べて良かったです。

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