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未明にロックにアプローチ
4時に起きてバルコニーから前方を見ると、煌々と照らされたパナマ運河のロックが見えています。
急いで15階船首のオブザーベーション・ラウンジに行きました。ここからの景色が一番良いので既に大勢の船客が集まっていましたが、幸い窓際の良い場所を確保できました。
正面に見えるロックの最初のゲートに向かって、歩くより遅い時速2kmくらいでじわじわと近づいていきました。
念願のクルーズ船でのパナマ運河通過が、いよいよ始まります。
パナマ運河を通過するには
ブリス号は、次の4段階を経て太平洋からカリブ海へ抜けます。
- 3段のココリ・ロック(Cocoli Locks)で高度を上げて、
- 人工の谷であるクレブラ・カット(Clebra Cut)を通り抜け、
- 人造湖であるガトゥン湖(Gatun Lake)を横断し、
- 3段のアグア・クララ・ロック(Agua Clara Locks)で高度を下げます。
ブリス号が通る2つのロックは、より大きな船舶が通過できるように、従来のロックに並行して新たに造られたものです。
実は、ブリス号自体が、パナマ運河をぎりぎり通過できる最大の大きさ(NeoPanaMaxと呼ばれる規格)に合わせて造られていて、パナマ運河を通過した最大の客船という記録を持っています。
規格の全長366m x 全幅55mに対して、ブリス号は全長330m x 全幅41mで、長さ方向については、船の前後にタグボートが付くので本当にギリギリですし、幅方向も、巨大な船を岸に接触させずに通すのにあまりゆとりはありません。
①ココリ・ロックの通過
最初のゲートが開き始めました。従来のロックのゲートは観音開き型ですが、パナマ運河の新しいロックのゲートは、より効率が良くメンテしやすい横方向にスライドする形になっています。
3つある中の最初のチャンバーに船が収まり、後ろのゲートが閉まった後、水位が上がります。写真では分かりませんが、船首のすぐ下にはタグボートが1隻いて、前後につながれたタグボートで船を動かしています。
2つ目のチャンバーでも同様のプロセスを繰り返して、水位がさらに上がりました。パナマ運河通過中は、普段はアクセスできない船首のデッキが、船客に開放されています。
最後のゲートは2重になっていて、両方がほぼ同時に開き始めました。
3段になったココリ・ロックを全部通過するのに、2時間半以上かかりました。
②クレブラ・カットの通過
貴重な機会なので船首デッキに行って、ブリッジ(操舵室)とオブザーベーション・ラウンジを見上げてみました。
ようやく一息つけるので、16階のカフェテリアで朝食にしていると、パナマ運河に架かる3つの橋のうち真ん中の橋をくぐりました。(窓に反射してあまり良い写真ではありません。)
クレブラ・カットに入ると、数隻の船とすれ違いました。
航路を示すのに、左に赤いブイ、右に緑のブイが所々にありましたが、それに加えて、両岸には4枚1組の白い標識が設置されていて、左右2枚ずつの延長線の間を船は進み、次の1組の標識の延長線に近づいたらその間に入るように船を転進させるのを繰り返すことで、航路の中心からはずれないようにする仕組みになっていました。
それでも、左舷側の岸にずいぶんと接近することもあり、ちょっとハラハラしました。
③ガトゥン湖の横断
クレブラ・カットを3時間弱かけて抜けて、船はガトゥン湖に出ました。
湖上で日本郵船の自動車運搬船と行き交いました。
アグア・クララ・ロックが見えてきました。貨物船が1つ目のチャンバーに入ったところです。ブリス号に向かってタグボートもやって来ました。
ガトゥン湖の横断には2時間弱かかりました。
アグア・クララ・ロックの通過
前の貨物船が2つ目のチャンバーに移動するまで待たされましたが、ようやくゲートが開いてブリス号が1つ目のチャンバーに向かいます。
ゲートが引き込まれる場所がよく見えます。その奥に見える水面は、チャンバーの水位を下げる時にその水を溜めておく所で、新しいロックでは貴重な水を再利用できるようになっています。
船腹と岸との間には、わずかな隙間しかありません。
船尾側に付いているタグボートです。
船首側のタグボートは、船首のデッキから乗り出すようにしてやっと見えました。巨大な船が岸やゲートにぶつからずにロックの中を移動できるのは、彼らのおかげです。
船は、最後のチャンバーの一番奥まで来ました。
そして、最後のゲートが開き始めました。上の写真と比べると、チャンバー内の水位がどれだけ下がるのかが分かります。
3段のアグア・クララ・ロックの通過にちょうど2時間半かかりました。
最後にアトランティコ橋をくぐるとカリブ海です。
橋の真ん中には人が立っていて、手を振ってくれました。
朝4時から11時間かけてのパナマ運河の通過を最初から最後までこの目でしっかり見届けることができました
一生の思い出に残るような素晴らしい体験でした。