この記事は約7分でお読みいただけます。
ベックフット号のようなフォールディング(折りたたみ式)カヤックによるダウンリバー初心者向けのスクールに参加してきました。場所は、急流で名高い埼玉県の長瀞(荒川)です。
参加者10名が6艇に分乗し、インストラクター2人が乗る2艇を加えると全部で8艇です。自艇持込参加は我家以外にもう1組。そもそも他の艇と一緒するのは初めてだし、ベックフット号で川を下るのもまだ2回目です。
午前中は河原でパドリングや注意点の講習とカヤックの組み立てで、幕の内弁当を食べた後、いよいよ水上に出ました。
まずは川の流れがそう強くないところを少し上流に向かって漕いで、右岸のエディ(流れの無いところ)に集合です。この時点ですんなり集合できたのはベックフット号を含めて3艇のみ。インストラクターに「皆さんと他の艇とどこが違うと思います?」と聞かれ、他の艇を眺めるけど分かりません。「皆さんは行きたい方向を見ていましたが、他の艇は手元ばかりみています。」とのこと。なるほど~。
次に、川上45度くらいに船首を向けて、右岸から左岸へ、左岸から右岸へ、流れの中を横断する「フェリーグライド」の練習です。45度よりも川の流れに直角になりがちでしたが、何度も練習して、「大体できています」とのこと。この時点で1艇、沈(チン=転覆)して、皆から拍手を受けました。
いよいよダウンリバーです。流れが速く浅めの水中に岩があって波立っている瀬を1列に連なって下ります。ベックフット号は、先頭のインストラクターの艇のすぐ後ろに続いて2番手で、ひたすら前の艇が取るコース通りになぞって、大きく波立っている所では水をかぶりながらも、無事に瀬を通過しました。後ろから来た艇に「上手ですねえ」なんて言われちゃいました(^^)。これくらいの瀬は錦川で経験済みでしたが、流れは長瀞の方が少し速いような気がします。
左岸のエディで艇から降りて、本日最大の難所というこの先の瀬を歩いてスカウティング(偵察)します。少し左カーブの流れの本流がもろにぶつかっている右岸の岩をインストラクターが指して、あれに捕まるとカヌーが折れますから、あの岩の左側を通るようにとのこと。左に寄り過ぎると浅くなっているので、うまく真ん中を通り抜ける必要があります。緊張しながらも、1艇も沈することなくここは全艇がうまく通り抜けました。皆で拍手。
次の瀬もスカウティングして、コースをあらかじめ考えて、無事に通過しました。
いよいよ最後の瀬で、先ほどの「本日最大の難所」よりももっと難所がありました。流れの真ん中に大きな岩があり、その下流側はボコボコに沸騰したみたいになっていて、岩の右側がベストルート、岩の左側が代替ルートということです。見るからに恐ろしげな岩です。ここは挑戦したい人だけが挑戦するということで、2~3艇リタイヤしました。
最初にインストラクターがお手本を見せてくれます。ところが、後で「右に行くか左に行くか迷ったので、悪いお手本になってしまいました」とおっしゃっていましたが、大岩の上を乗り越えて大きくバウンドしていました。次に参加者の艇が1艇ずつ順番に、下流側でいざという時のレスキューに待機するもう1人のインストラクターからの合図を受けた上で出発します。
次の艇もやはり右をねらったけれども曲がりきれずに大岩の上を乗り越えて行きました。その後、うまく右側を通った艇もありました。今回の参加者の中で最も上手そうな自艇持込参加のペアは、左側をうまく通った後に沈していました。約半分の艇は沈しているようです。
いよいよ最後にベックフット号の番が回ってきました。あらかじめ左側を行こうと航海士と打ち合わせておいて出発。浅い瀬で少し底を擦りながら、大岩の手前で左側を通るルートにうまく持って行って、バシャーンと水をかぶりながらも、無事に大岩を抜けました。ヤッターと思いながら、皆が集合している右岸のエディに向けるために左側を一生懸命に漕いで、右に急いで曲がろうとしていたら、だんだん艇が左に傾いてきて、それを戻そうとする暇もなく、ベックフット号での「初沈!」です。
全身水没した後、私が浮かび上がったのは完全にひっくり返ったベックフット号の下流側でした。まだパドルは放さず持っています。艇を起こしてそれにつかまって流れようと思って、艇につかまろうとしましたが、手がかりがなく起こせそうな感じがしなくて、そのうちに艇からちょっと離れてしまいました。その時に、流される時は下流を向いて足を上げておくようにという指示を思い出したので、艇のある上流側じゃなくて下流側に顔と身体を向けた途端、すぐに小さ目の岩が目前に現れて、これは確かに下を向いて流されていないと怪我するなと思いました。
岸から「ロープ!」という声が聞こえ、右後方からレスキュー用のロープを投げようとしているようです。そちらを向きたいのですが、次々と現れる岩から目が放せないので、ロープをつかまえることが出来ません。ちょっと浅いところで何度か足で踏ん張って止まって立ち上がろうと思いましたが、流れが速くそれも出来ず、本でそうすることは足がトラップされて危険だからやってはいけないと書いてあったのも思い出し、もうしばらく流されます。
航海士はレスキューのために水に飛び込んでくれた自艇参加ペアの女性の方に助けられつつ少し前方を流されているようで、3度目くらいに投げられたロープをようやく掴みました。私もそのロープをつかもうとちょっと泳いでいるうちに立てるところまで来たので、ようやく岸に上がることが出来ました。2人とも最後までパドルを手放しませんでした。ベックフット号は、誰かがつかまえてくれたようで、数十メートル上流の岸に引き上げられていました。
実は私は気付かなかったのですが(それは後で問題だと思いましたが)、航海士は沈した時にひっくり返ったベックフット号の中に頭が残っていて、岸にいたインストラクターや他の参加者からは、流されているのは私1人しか見えなかったので、もう1人はどこだ? 水没しているのか? これはヤバイ! と、かなりあせっていたそうです。
2人とも特に怪我もなく水を飲むこともなく、レスキュー体制が整っている中、流れがそこそこに速いところで沈したのは、本当に貴重な経験でした。沈するまでは経験や予想の範囲内のスクールでしたが、沈して流されたことで、それまでの10倍以上の新たなことを学べたように思います。